チタンコーティング(PVD/CVD)の適用

鉄系材料の表面処理には熱処理を除くと、大きく分けて膜を張るコーティング処理、表面から浸み込む浸透拡散処理の2通りがあります。また、その硬質膜の組成、厚みによって分類されます。また、素材の組成、硬度、焼入れ焼戻し温度、表面に加わる荷重、衝撃、温度、腐食、硬質粒子の有無などにによっても選択が細かく分かれます。下記に適用例別に概要を記するので、詳細に関しては弊社にお問合せいただければ幸いです。

チタンコーティング(PVD/CVD)の適用例

射出成型機金型

射出成型機金型

高硬度チタンコーティング膜とラジカル窒化の複合処理

これまで離型、耐磨耐食、樹脂フロー改善等を目的に多数の応用実績がありました。加えて、近年樹脂材料は各段の進歩を遂げ、従前と比べ腐食摩耗の傾向が一段と強くなってまいりましたことは否めません。近年、適宜新しい膜が開発され、ピンホールの少ない高耐食耐摩耗性の膜が開発され実績を重ねております。

ところが、一部ではGF50%、難燃V0、可塑剤大量添加による高流動樹脂など、極端な樹脂材料を成型現場で目にするようになりました。コーティングそのものは腐食摩耗環境下で一定の耐久性があるものの、繰り返される面圧は膜直下の下地を痛め、それによって生じた割れや剝れから腐食性物質が膜直下に浸透し、次第に素材が侵されるケースを目にします。そのため、ラジカル窒化を併用し膜の下支えとして組み合わせることが多くなってきました。もちろん硬くなるが故の脆さは大きくなるものの、素材の塑性変形によるコーティング膜の割れは回避できるので、使用方法との組み合わせ次第ではトータルで耐久性が改善される傾向にあると考えられます。

実際には鋼種、ラジカル窒化のタイプ、コーティング膜の種類、樹脂材料、温度、添加物の内容、面粗度等により、対応策は種々様々となります。詳細は別途落ち合わせいただき、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。 お気軽にお問合せフォームよりご質問ください。

射出成型機部品

射出成型機部品

離型性硬質膜としてのチタンコーティング

成型機部品、特に透明品や淡色品の成型においては、これまで黒点の発生やメンテナンスにおいて、不良発生と工数削減に長年悩まされてきました。実際に人海戦術でメンテナンスに時間をかけて不良対策を行い、高い品質レベルを保ってきたのは間違いありません。近年高く認知されてまいりましたが、スクリューや三点セットにチタンコートを施すことで黒点対策とメンテ軽減に効果があり、有効な対策と言えるかと思います。

ノズルに関しては内面にコーティングし、パージ材の固化後引き抜き内面を磨くだけでメンテ終了となります。加えて下地強化の行うラジカル窒化を組み合わせることで、より耐久性を向上し前衛的な対策を講じることが出来ます。

鋼種、ラジカル窒化のタイプ、コーティング膜の種類、樹脂材料、温度、添加物の内容、面粗度等により、対応策は種々様々となります。詳細は別途落ち合わせいただき、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。 お気軽にお問合せフォームよりご質問ください。

冷間鍛造、温間鍛造、プレス金型 

冷間鍛造、温間鍛造、プレス金型 

高摺動特性を持ったコーティング膜とラジカル窒化の複合処理

プレスに代表される塑性変形加工、特に冷間/温間鍛造金型は、金型表面と素材の間で高い摩擦が発生し高熱を発します。むろん、固体、液体を含め種々の潤滑剤を併用するのは間違いありませんが、高い生産性を求めれば求めるほど潤滑切れになるケースが散見されます。このようなケースに際し、摺動特性の高い高硬度耐熱被膜を用いて金型の耐久性を高めるのが有効です。

代表的な被膜として、CrN、ヴィーナスコーティング、フォージス等が挙げられます。また、その下支えとしてラジカル窒化との複合処理が大変有効ですので、併せて検討するべきかと思います。

鋼種、ラジカル窒化のタイプ、コーティング膜の種類、非加工材、温度、プレス油、面粗度等により、対応策は種々様々となります。詳細は別途落ち合わせいただき、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。お気軽にお問合せフォームよりご質問ください。

エンドミル、バイト、その他切削工具

エンドミル、バイト、その他切削工具

高硬度耐熱コーティング膜

切削工具においてコーティングを施すことは日常的になっています。が、コーティングをすることで刃先の耐久性が向上する理由は、あまり広く知られていないように感じます。実は、高硬度被膜をコーティングすることで刃先が硬くなるわけではなく、コーティングを施すことで切粉のまとわりつきが低減し、刃先の昇温が抑制されることがその理由と言えます。

一般的に切削時は刃先に構成刃先(被削材が、まるで刃物の一部のようになり刃先を構成する)が生成され、刃先が丸くなったような状態となり刃先温度が上昇します。これにより、ハイス工具であれば熱ダレ(硬度低下)を起こし、超硬工具であればヒートショックによる微小欠損(刃先)が発生します。むろん、切削時の発熱が少ない加工については、単純に表面硬度が高くなることで寿命が延びるケースもあります。また、切削液が水溶性が油性化によっても適応膜種が大きく異なるため、十分な検討が必要となります。

被削材、硬度、コーティング膜の種類、切削液、温度、面粗度、刃先形状等により、対応策は種々様々となります。詳細は別途落ち合わせいただき、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。お気軽にお問合せフォームよりご質問ください。

機械部品1

機械部品1

高摺動特性膜

機械部品の表面に求められる性能は、摺動性と耐摩耗性が高く、相手攻撃性が低いことが重要となります。その最たる例として、エンジンのピストンリングが上げられると思います。これまでクロムメッキなどが主流でしたが、環境に配慮し、SDG'sとして乾式であるチタンコーティングが採用されてます。EVシフトが鮮明ですが、まだまだ大型トラックはディーゼル機関が主力と言えます。

エンジンの気密を維持できる耐摩耗性を付与するため、ラジカル窒化を施したのちCrNを厚く被覆し使用しています。ディーゼル機関は燃料から発生する硫黄成分などに対して耐腐食性も要求され、耐摩耗、耐熱性と併せて大変厳しい性能が求められます。また、一般の産業機械においてもピストンリング同様、ラジカル窒化を施すことで膜の下支えが大きな効果生み、飛躍的な状況延長に寄与する場合が数多くあります。

母材、相手材、コーティング膜の種類、樹脂材料、温度、添加物の内容、面粗度等により、対応策は種々様々となります。詳細は別途落ち合わせいただき、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。お気軽にお問合せフォームよりご質問ください。

機械部品2

機械部品2

高周波摺動による摩耗及びキャビテーション

昨今の生産設備においては、周波数の高い振動が原因となり、部品同士の摩耗や凝着が発生するケースが散見されます。一般的にゴム等の防振構造で振動を吸収できる構造になっていますが、各部のユニットごとの高周波振動を吸収するのはなかなか困難となっています。そのため、摺動部分において高硬度の薄膜をコーティングし、耐摩耗と耐凝着性を付与することで振動対策としています。

また、液体中で発生するキャビテーションについても似たような対策を講じています。ポンプや高速船のスクリューは部品の表面に泡が発生し、それが消滅する際に衝撃波が発生します。だいぶ昔になりますが、外洋パワーボートレースにおいてステンレス製のプロペラが腐食し早期に使用不能となるケースがありました。その対策として、全面をTiNでコーティングしキャビテーションによる壊食を防止し、表面の欠損を抑えたた実績があります。逆に超音波洗浄機はその衝撃波を洗浄に利用しますが、当然ホーンなどの金属表面は浸食され、キャビテーション壊食が発生します。こちらも対策としては表面をできるだけ硬くすることとなり、Tinに代表される硬質膜をコーティングすることを推奨いたします。

その他、蒸気タービンのエロージョン、微粒子によるスラリー摩耗などに対してチタンコーティングは有効と言ます。浸食メカニズム、母材、エネルギー等により、対応策は種々様々となります。詳細は別途落ち合わせいただき、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。お気軽にお問合せフォームよりご質問ください。